賃貸住宅の断熱性は、入居者の暮らしの質を左右する大切なものです。高い断熱性を持つ建物なら、冷暖房の効きが悪い、結露がひどいといった暮らしのストレスもなく、快適に住むことができる上、光熱費の削減という大きなメリットも。ただし、設備や内装などに比べて内覧ではわかりにくく、住んで初めてその価値が実感できる性能でもあります。

在宅時間が増えたことで、昨今、住まいの快適性への関心は非常に高まっています。女性誌などで「冬に暖かい家づくり」の特集が組まれたり、インターネット上で光熱費についての情報交換や、熱心な議論が行われたりする様子を多く見かけるようになりました。それだけ暮らしの快適性や経済性に注目が集まっているといえるでしょう。

断熱性とは、簡単にいえばポットの保温性能のようなものです。断熱性に優れた建物は、寒い冬でも熱の放出を防ぐので暖かく、夏はエアコンの冷気を逃しにくくなります。断熱性を上げるためには、建築時に壁や天井・床に、断熱材で家を覆うように敷き詰めることに加え、優れた断熱性を持つ外壁を選ぶことも重要です。

また、熱の出入りが大きく断熱の弱点となる窓には、断熱と遮熱の性能を併せ持つ複層ガラスなど、高性能の断熱製品を使用する必要があります。ただし、むやみに壁や天井に断熱材を入れてしまうと、内部に結露を起こして腐食の原因になることも。壁体内の通気を確保する技術を持った、経験豊富な施工会社を選びましょう。

入居者が新居を探すときの事前の見学件数は減りつつあり、ネット上で情報を取捨選択し、見学したい物件を絞った上で来店する傾向が見られます。現在、国土交通省では「住宅情報提供サイト等における省エネ性能の光熱費表示」の検討も始まっています。今後はさらに多くの人が省エネ性能に注目するようになり、家選びの指標となっていくと考えられます。

快適な暮らしを提供できる賃貸住宅は、長期の入居継続と安定経営をもたらします。国も積極的に建物の断熱性の向上を推進しており、これからはさらに進んで、断熱性に太陽光発電を組み合わせた「ZEH（ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス）」が、時代に求められる住まいとなっていくでしょう。